突然外陰部が腫れてすごい痛みに襲われる。そんなつらい経験をされた方も少なくないと思います。外陰部の感染症としては、バルトリン腺膿瘍が最も多いです。排尿時の拭き取りやデリケートゾーンのお手入れなどでできた微細な傷に感染することがあります。
バルトリン腺は膣の入り口の時計方向の5時と7時の方向にありますが、通常の状態では、触ってもどこにあるか分かりません。バルトリン腺の出口が何らかの原因で閉鎖してしまうと(打撲や感染などで腫れてしまい、出口が閉じてしまう)、バルトリン腺の中で作られた分泌物が外へ流れることができなくなります。このため、バルトリン腺が拡大して嚢胞を形成します。バルトリン腺嚢胞の中に感染を起こした場合に「膿瘍」となります。この場合は激しい痛みを伴い、座ることもできないくらいになります。外陰部は大きく腫れて触るだけで痛みを伴い、内部には膿が貯留しています。海外旅行中にバルトリン腺膿瘍になり、とても我慢できずに中途で帰国し治療をした患者さんも経験いたしました。
バルトリン腺膿瘍の治療は、多くの場合は①:膿瘍穿刺→内容物吸引、抗生物質投与です。膨らんだ部分を注射針で穿刺し内容を吸引します。その後、抗生物質を内服し感染の治療をおこないます。穿刺した針の穴が自然にふさがるため再発する場合がありますが、多くの方はこれで軽快(経過観察)します。上記をおこなっても再発する場合や、ひどく膿んでいる場合は②:バルトリン腺造袋術(開窓術)をおこないます。バルトリン膿瘍部分が自然に閉じないように皮膚を切除し、膿瘍内部とつながるようにする小手術です。内部に貯まった膿が持続的に外に排出することで、感染症状が改善します。「自然に閉じないように」といっても、症状改善に伴い、部位が分からないくらいに自然に修復していきます。手術は局所麻酔で可能です。もちろん、日帰りが可能な手術です。